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断熱・省エネ

更新日:2024年12月24日

断熱リフォームの効果とは? NEW

「日本の家は寒い」といわれます。北海道や東北・北陸地方の一部を除けば、比較的温暖な気候に恵まれていることもあり、窓を小さくして断熱を強化し、全室を暖房する、という対策は取られていません。家族が集まる場所や限られた個室だけに暖房器具を設置して寒い時間帯に使い、その他の玄関や廊下、水回り、客間などの空間はとくに暖房しないというのが一般的でした。そのため、真冬の時期などでは、住まいの中で10℃を下回る場所もあります。「我慢の生活」が多い日本ですが、それが健康に悪影響を与えているという調査結果も出てきています。

「寒い家」が健康を害している

写真:「寒い家」が健康を害している
国土交通省がつくる安心居住政策研究会に報告された資料に興味深い数字が示されました。それは「寒い家が健康に悪影響を及ぼしている」ということです。

慶應義塾大学の伊香賀俊治教授が中心になってまとめたものですが、それによると「家庭内事故による死亡者数は増加傾向にあり、その数は冬に多い」「とくに心疾患、脳血管疾患などの循環器疾患による死亡事故は、12月、1月、2月に際だって多い」、「温暖地で高断熱住宅の普及率の低い地域ほど冬の死亡者が多い」というのです。


実はこれまで、住まいの暖かさや寒さと健康との関係、とくに心疾患による死亡者数とを結びつけたデータはありませんでした。一定の地域に脳卒中が多いといったことは報告されていましたが、それは塩分摂取の多さといった食生活の問題や運動習慣の問題として論じられることが多く、住まいの環境(とくに室温)との関係で分析されたことはなかったのです。その意味で重要な指摘でした。

イギリスでは「寒い家」は建てられない

写真:イギリスでは「寒い家」は建てられない
日本ではまったく進んでいないのですが、イギリスでは冬期の室内温度について厳しく規制しています。産業革命や公害問題を経てきたイギリスは、古くから都市環境や住環境と人の健康に高い関心を持ってきました。室内温度についての厳しい目もその伝統を汲むものだといわれています。

イギリス保健省は、昼間の居間の最低室温について、推奨温度を21℃とし、夜間の寝室の最低温度が18℃としています。つまり、いついかなる時でも、住まいの室温は18℃以上を常にキープすることを求めているわけです。18℃未満の室内は血圧の上昇、循環器系疾患の恐れがあり、16℃未満では呼吸器系疾患に対する抵抗力が低下すると警告。さらに9~12℃では、心疾患、血圧上昇の危険があり、5℃では低体温症を発症する危険が大きいとしています。国としてここまで踏み込んだ表現をするのは非常に珍しいものです。

日本ではまだ、室温と健康を関連づけた公的な基準やガイドラインはありません。しかし、健康との相関関係が明らかになってきている以上、室温を基準にした断熱性能の推奨などが行われてもよいのかもしれません。

住まいが暖かければ、健康になる

写真:住まいが暖かければ、健康になる
寒い家の危険性は、裏返せば暖かな家の快適性であり、健康への寄与ということでもあります。実際、寒い家の危険性を示した伊香賀教授は、この点についての調査データを先の国交省の安心居住政策研究会で示しています。

そのひとつは高知県梼原町で行った調査結果です。無作為抽出した約1,000人を12年間にわたって追跡調査したもので、これによると、午前0時の室温の平均が18℃未満の寒い家に住んでいる人は、18℃以上の暖かい家に住んでいる人に比べて、10年後の高血圧の発症率が6倍以上であったということです。

また、同教授が住宅の断熱リフォームの前後で行ったある高齢者に対する調査では、断熱改修後の冬の起床時平均室温が、従来の8℃から20℃に改善されたことによって起床時の最高血圧が12mmHg低下するという結果が得られました(「こうち健康・省エネ住宅推進協議会と伊加賀研究室による共同調査」)。


これまで日本では「断熱リフォーム」はもっぱら省エネの観点から語られてきました。エアコンの運転が減り二酸化炭素排出量が減る。電気代が安くなる、と語られてきたのです。しかし、まずは冬の室温を高めるためにこそ断熱リフォームが必要であり、それが健康の改善に直結するということこそ価値として示していく必要があるのではないでしょうか。いま、暖かな「健康住宅」が求められています。

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