リフォームを学ぶ | 介護・バリアフリー

介護・バリアフリー

更新日:2024年12月24日

住宅内の生活動線を安全で安心な空間に整えよう NEW

居室やリビングから玄関・トイレなどの生活動線上において、バリアフリーを意識して空間を備えておくと、安全で安心な自宅で充実した自立した生活を送りやすくなります。特に将来、車椅子や介助が必要になった時、車椅子や介助者と移動する空間となりますので、今は必要なくても将来のために整えておきましょう。
それでは、バリアフリーリフォームのポイントを考えてみましょう。

生活動線上の床の段差や素材に注意しよう

写真:生活動線上の床の段差や素材に注意しよう
生活動線上において、床の少しの段差を解消することによって、転倒・転落などの事故を予防することができます。一番つまずきやすいと言われている床の段差は1㎝〜3㎝程度のちょっとした段差です。段差がなくても床の素材が変わる時や歩行感が変わること等が原因で、つまづくこともあります。素材の色をはっきり変えて歩行感が変わることを視覚的にもわかるようにする工夫も事故の予防に効果的です。

また、車椅子を使用する際はちょっとした段差も不自由になります。畳からフローリングへ変わる箇所や、フローリングからカーペットなど、仕上げ素材の異なる境目に入っている材料のちょっとした段差や、厚手のラグをしいた際の段差等、様々な箇所での配慮が必要です。なるべく段差を小さくすることと、低い箇所から高い箇所へと斜めにカットされた材料を境目に使用するなどの工夫をすると、つまずく心配も不自由さも解消されます。また、将来車いすを使用する場合、毛足の長いラグやカーペットは動きにくいので、注意が必要です。

そして、足元の段差や手元が影になって見えない環境にならないように、夜間のことも考慮して明るく保てるように計画することも重要です。例えば、通った時に自動的にスイッチがONになるセンサー付きの足元を照らすフットライトを設置したり、手元も暗くならないような照明計画をすることが重要です。

また、床の仕上げ材は滑りやすいかどうかを考慮して選びましょう。水周りの床などに使用されるタイルや大理石などの材質はとても硬く、少しでも濡れると滑りやすい性質があり、転倒すると大きな危険を伴います。小さなお子様や、高齢者の方のお住まいは特に注意が必要です。滑りにくく工夫されていて、衝撃を和らげるようなビニール質でクッション性のある素材にする等、十分配慮をして素材を選びましょう。また、移動する廊下や居室にも配慮しましょう。滑りにくいフローリングなどもあります。素材を選ぶ時には安全性にも配慮して選びましょう。

動作を伴う箇所・移動する箇所に手摺を設置

座る、立つという行為のあるトイレ・浴室などの空間には、手すりを設置しましょう。高齢者にとって座ったり立ったりする時には、体重を支えられる手すりがあると転倒防止にもなります。浴室は特に床が滑りやすくなっています。浴槽への出入り時に動作がスムーズに行える位置に手すりがあると安全です。

また、廊下など生活動線上に手すりが設置されていると、伝って歩ける手がかりがあり、高齢者や要介護・要支援認定者の自立を促す重要なアイテムにもなります。そして介護負担の軽減にも繋がります。

座った体勢から立ち上がる時や、立った体勢から座るなどの動作の時は、縦状に設置した手すりが便利です。横に移動するときには水平方向に設置された手すりが便利です。

また、手すりの形状も棒状のものや、板状のもの、強く握れる丸いもの等様々です。

素材も木製、金属製、塩ビ製等、いろいろとあります。インテリアとしてのデザイン性も取り入れたいところですが、滑りやすくないか、きちんと手にフィットして握ることが出来るなど、きちんと体を支えられるかどうか考えて選びましょう。

手すりの設置について前もって知っておきたいポイントがあります。まず、通路や出入り口の扉の幅員を確保することです。手すりを設置すると手すりの奥行き分狭くなりますので、その寸法を考慮して幅も計画してください。それから、手すりは基本的に下地が無いとビスで取り付けられません。今の段階では必要が無くても将来的に必要になりそうな玄関の上り框の部分や廊下・トイレ・浴室などの場所には、リフォーム時に予め下地を入れておくと、後からビス固定ができるのでお勧めです。その際に高齢になると少し体勢が低くなりがちですので、少し低めを想定しておくと良いでしょう。

生活動線上の幅や広さを確保しよう

写真:生活動線上の幅や広さを確保しよう
車椅子利用者本人や、介助者がストレスなく余裕をもって生活するためには、廊下の幅や広さ、居室・トイレ・浴室の出入り口の開口幅は、必要な寸法を確保する必要があります。特に、車椅子は直角に曲がることは難しく、廊下などの曲がり角は大きな幅が必要となりますので、廊下の幅や出入り口の開口幅を800㎜から900㎜程度の内法幅(壁から壁の寸法)にすることがお勧めです。

手すりを設置することで少し狭くなってしまう場合や、元々幅が足りない場合は拡張工事が必要となります。介助しやすいように寝室から浴室やトイレまでを出来るだけ曲がらずまっすぐにアプローチできるようにしておくなど、リフォームをするタイミングなどで将来を見据えた計画を立てておきましょう。

出入り口となる開口扉は、開き扉から引き戸に交換すると、出入り口の幅が広く確保できます。引き戸の設置が難しい場合は、折れ戸にするなどの工夫をして開口の幅を確保しましょう。開口幅を広く確保しておくと、万が一、将来介助が必要になっても、介助者とともに、又は車椅子でスムーズに移動することができます。

その際、折角広く確保した動線上に物が置かれたりすると、幅を広くした意味がありません。動線上に物が置かれることのないように、必要な箇所に充分な収納を確保しましょう。例えば、廊下は家事動線でもありますので、掃除機を出し入れしやすい収納を廊下に設置したり、手摺の代わりにもなるような収納家具を設置することも出来ます。物を減らして整理整頓されたすっきりとした住まいにしておくことも重要です。

執筆者情報

写真:執筆者情報
佐藤 恵利子さん/一級建築士(住まいのナビゲーター)

2003年より一級建築士事務所を主宰し、マンションのスケルトンリフォームで活躍。2014年より(一財)住まいづくりナビセンターの住まいのナビゲーターとして住宅相談、セミナー講師を担当。
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