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更新日:2024年12月24日

出掛けよう!不安なく出掛けられる住まいとは? NEW

何気なく使ってきた玄関、玄関から家の前の道に出るまでの通路や門、改めて眺めると不便や不安を感じるところはありませんか?家も人も歳を重ねると、そんな箇所は徐々に増えていきます。玄関や外の通路は出入りする時に必ず使う場所。いつでも誰でも安全にストレスなく使えるようにしておきたい所です。将来、からだの機能が下がっても、出掛けることが億劫にならず、安心して使い続けられるようなリフォームをしませんか?

さぁ支度!まず玄関に向かいましょう

写真:さぁ支度!まず玄関に向かいましょう
玄関は何をする場所でしょうか?日本の住宅の玄関は、靴を脱ぎ履きする場所です。かつて日本のいわゆる和風住宅は、玄関と屋内の床に40センチメートルほどの段差があり、段差を縮める沓脱石や腰かける式台などがありました。腰かけて靴の脱ぎ履きをする様子は、サザエさんのアニメなどでもおなじみです。

近年、戸建住宅の玄関と屋内の段差は、20センチメートルほどが一般的です。式台や沓脱石はなく、上がり框が上足と下足を分けています。この段差は、階段一段分程度なので立ったまま靴を脱ぎ履きできますが、皆さんも少しふらついたり、自然と玄関の下足入れや壁に手をついたりしていませんか?

段差があり、しかも靴の脱ぎ履きをする玄関の上がり框付近では、手すりを設けたり、下足入れを兼ねたベンチや式台などを設けたりする改修が役立ちます。もし手すりが壁に付けられない場合には、床と天井に固定するポール状のものを付ける方法もあります。また、広さのある玄関であれば椅子を置くだけでも助けになります。椅子やベンチは、靴の脱ぎ履きに腰かけるだけでなく、身支度の際に手荷物を置くこともでき便利です。

そして、この部分の足元を明るくする工夫も大切です。今ある照明ではちょうど段差に影ができたり、上がり框周りが暗くなっていませんか?夜の状況をよく確認して照明を増やす、暗くなったら自動で点灯する器具を設けるなどの工夫をしましょう。足元灯も有効です。コンセントを利用して付けられるものや非常時に取り外して懐中電灯として使えるものもあります。

今は特に困っているという実感がなくても年齢を重ねるにつれ足元は必ず衰えてきます。転ばぬ先の杖として、一番初めに玄関の中で工夫したい部分は上がり框周りではないでしょうか。

玄関扉を開けて、閉めて、いざ出発!

写真:玄関扉を開けて、閉めて、いざ出発!
住まいの玄関扉はどのようなスタイルでしょう。引き戸ですか?開き扉ですか?扉は外に向かって開きますか?玄関の内側に開きますか?

少し前まで、特に都市部の住宅の玄関扉は、玄関の外に向かって開く開き扉が大半でした。日本の和風住宅は元々引き戸の玄関扉でしたが、既製扉の普及と同時に開き扉が増えていきました。日本の気候は雨が多いので、水仕舞いの良い外開きの扉が普及したのかもしれません。また開き扉は、引き戸より取り付ける壁が少なくて済み、狭い玄関にも向きます。断熱性や気密性を上げるのも有利な形です。

ただ開き扉は、必ず内外どちらかに扉が動くための空間が必要になります。外開きの玄関扉なら、玄関扉前に人が下がって立つだけのスペースが必要になります。また通る際には、扉を押したり引いたりしながら通り抜けなければなりません。例えば大きな荷物を持ちながら、また杖などを使いながら通るには少し不便ではないでしょうか。

そんなニーズもあり、この10年ほどの間に既製品の引き戸玄関扉がとても増えています。断熱性や気密性でも開き扉と遜色ないものが増え、選択の幅が広がりました。玄関周りが狭い住宅や家族構成によっては、開き扉より引き戸の方が使いやすい場合も少なくありません。思い切って引き戸への改修を考えてみてはいかがでしょう。

また、玄関扉の開閉や鍵の操作を行う際に、扉周りにも手すりがあると安心です。断熱性や気密性の上がった扉には、開け閉めの際に意外と力が必要なものもあります。近くに手すりがあると通過の際も安心ですし、開閉の際も体が安定します。

そして、できれば玄関扉の外側にも手荷物を置ける台や棚などを設けましょう。帰宅時に鞄の中の鍵を探したり、鍵の操作時に荷物や鞄を置いたりできます。将来に備えるとともに、今の暮らしでも便利で安全であることを目指しましょう。

注意!通路にしわ寄せがきていませんか?

写真:注意!通路にしわ寄せがきていませんか?
住まいの敷地は、通常道路より高くなっています。玄関と室内の段差が小さくなったこともあり、玄関から道路までの通路には段差や傾斜があります。こうした敷地内の通路は、建物と違って少し無理をして作られていたり、必ずしも安全でない場合もあります。また、周囲の植物が徐々に大きくなって状況が変わったり、仕上げの劣化が進んでいることもあります。
段差や凹凸があると、キャスターのついた鞄や買い物に使うカートを動かしたり、持ち上げたりするのも大変です。また年齢が上がり足先がうまく上がらなくなると、小さな段差でもつまずきます。外部通路は、気になる箇所が見つかることが多いところです。

可能であれば、段差はスロープに改修したり、路面の仕上げを変更したり、手すりを設けるなど、安全面にも留意した改修を行いましょう。但しスロープにする場合には注意が必要です。傾斜の大きなスロープは足への負担も大きく体勢も安定しません。段差よりも危険になる場合もあります。改修の際には必ず専門家とよく相談して、慎重に検討しましょう。

また、特に滑りにくい仕上げに留意することが大切です。雨や雪の時には、傾斜の小さなスロープでもとても滑りやすくなります。天候や靴の種類に左右されにくく滑りにくい仕上げ材を選ぶことが重要です。

もし階段や段差が残る場合でも、手すりや仕上げ材の選び方で安全でスムーズに使える通路にすることはできます。使い方や住み手の状況は様々です。庭や植物との関係にも注意し、目的をよく整理して安心で快適に使える通路にしましょう。

心身の機能が低下しても、安心して家と外を行き来できる環境が整えば、外出や運動、社会活動も億劫にはなりません。外の世界とつながる玄関や通路を安全に整えて、心も体も健康に保てる住まいを備えましょう。

執筆者情報

写真:執筆者情報
村上 まみさん/一級建築士(住まいのナビゲーター)

大学院では歴史的町並みの暮らしとかたちの調査研究を専攻。修了後、住宅を中心にじっくりと仕事を進める小さな設計事務所に7年勤める。関わった人々から学んだものづくりの姿勢と仕事の進め方をベースに、独立して住宅の設計監理・コンサルの仕事を続けて現在に至る。平成14年より住まいのナビゲーター。趣味は活字を読むことと体を動かすこと。悩みや感動を分かち合う仲間とのおしゃべりと食事がエネルギー。
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