リフォームを学ぶ | 介護・バリアフリー
介護・バリアフリー
更新日:2024年12月24日
夏でも冬でも快適住まいで元気に長生き NEW
暑さ寒さに対する感覚は年齢とともに鈍くなります。夏の暑さ、冬の寒さを少々ならと我慢したり、過酷な室温であることに気付かないでいると身体に大変な負担がかかり、熱中症やヒートショックを引き起こす恐れがあります。高齢者にとり「我慢は美徳」ではなく「我慢は危険」なのです。暑すぎず寒すぎない快適な住まいは、高齢者の健康に良い影響を促し、生活の質も向上します。元気で長生きを目指し住まいの環境を見直しましょう。
高齢者の大敵は夏の暑さと冬の寒さ
冬場、暖かい室内からお風呂やトイレに行くとき寒さで凍えることはありせんか?
いくら寒くてもお風呂やトイレに行くのをやめるわけにはいきません。真冬の深夜にトイレに立つ時 、暖められた寝具の中と寒い廊下やトイレで体感する温度差は20℃近くにもなります。急激な体感温度の変化は血圧を大きく変動させ、身体に悪影響を与えます。これをヒートショックと言い、深刻な場合は脳梗塞や心筋梗塞などを引き起こす危険もあります。家庭内では浴室やトイレで発生することが多く、そのほとんどが高齢者であることもわかっています。高齢になると心身機能が低下し、寒さへの適応能力が下がるからです。
ヒートショックを防ぐには住まいの中の温度差を小さくすることが必要です。廊下や水回りにも冷暖房を設置したり、住まいの断熱性能を上げることで防ぎましょう。
断熱リフォームをすると外気の影響を受けにくくなり、一年を通して快適に過 ごせるので、身体への負担が小さくなります。断熱リフォーム前と後で比べると、もともと起床後の血圧の数値が上昇気味の傾向の人(年齢の高い人ほど多い)の血圧上昇を抑えられ、健康な値に近付いたというデータもあります。
(参照:健康長寿エビデンス取得委員会発行リーフレット「住まいの暖かさが高齢者の健康に好影響!!」)
(参照:健康長寿エビデンス取得委員会発行リーフレット「住まいの暖かさが高齢者の健康に好影響!!」)
また、暑い夏にも注意が必要です。 近年の地球温暖化の影響で夏の気温が上昇していることから、高齢者の熱中症が増加しています。高齢者の場合、屋外に比べ住宅での発生が半数を超えています。断熱リフォームは夏の強い日差しによる室内 の温度上昇を抑え、熱中症の予防にもつながります。室内 の保温効果も高まるので冷暖房の効きも良くなります。エアコンの風が苦手な方も弱風設定にして 心地よく利用しましょう。
快適生活、できるところから始めましょう
快適な住まいでは気分も着ている服装も軽くなり、家事や体を動かすことが億劫でなくなります。断熱リフォームや冷暖房などで住まいの温度を快適に保つことは、いつまでも元気に暮らすためにとても大切なことなのです。
「断熱リフォーム」には全面改修と部分改修があります。予算や工期などの条件を考慮して、できるところから快適な生活を目指しましょう。
①窓の断熱は効果抜群!
冷暖房をつけてもなかなか効果が出ないのは熱が外部へ逃げてしまうからです。穴の開いた容器に水がたまらないのと同じで、室内 の熱の逃げ場となっているのが窓や玄関、勝手口などの開口部です。断熱サッシや複層ガラスに取り換えたり、内窓をつけ二重サッシにすることで断熱、遮熱性能は大きく改善される上に結露の防止、防音、防犯などの効果も得られます。
遮光性、気密性の高いカーテンも窓からの熱の出入りをシャットアウトするので、部屋の温度を保ち冷暖房の効きを高める効果があります。
②寒いところをなくしていこう
ヒートショックが起こりやすい浴室、トイレ、廊下などの寒さ対策をしましょう。
浴室は冷たいタイル張りから保温性、気密性の高いユニットバスにリフォームすることで室内の温度だけでなく湯の温度も下がりにくくなり、バスタイムも快適になります。
トイレは暖房便座を設置することで室内の温度を上げることができます。高齢者の場合、間取りの変更を伴うリフォームの際は寝室とトイレは近くし、寒い廊下を通らずに行ける動線も考えましょう。寒い廊下を通る場合は暖房を設置しましょう。
③床・壁・ 天井の断熱でさらなる効果
住まいの老朽化や間取りの変更、耐震工事などで全面改修をする際は、断熱も住まい全体で考えましょう。開口部と合わせて床・壁・ 天井の断熱リフォームをすると効果はさらに上がります。既存の仕上げ材をはがし、壁の内部や床下、天井裏に断熱材を充填したり吹き付けをして施工します。
既存の仕上げ材をはがさず 、仕上げ材の上に張り付ける断熱リフォームも開発されています。工期が短く、住みながら手軽にできる工法です。
自動制御付空調でらくらく快適
住まいの断熱性能が良くなると冷暖房を使う頻度や温度設定が抑えられ、光熱費が安くなり省エネ効果も得られます。しかし、真夏や真冬、梅雨時の温度、湿度の調整は冷暖房に頼り、身体への負担を軽くしたいものです。
高齢になると暑さ寒さの感覚が鈍くなり、冷暖房のオン、オフのタイミングや快適に感じる温度、湿度の設定がわかりにくくなることがあります。冷暖房を含む空調設備機器は自動的に室内を快適に保つ機能(自動制御機能)の付いた機種を選びましょう。あらかじめ快適な環境を設定しておくと、センサーで人の動きや室内 の温度、湿度などを感知し自動的に最適な環境を作ります。その都度自分で温度調整や換気などをする必要がないので、たとえ認知機能や身体機能が低下して自分で動くことができなくても、室内 の快適性が保たれ、さらにはヒートショックや熱中症など、身体へおよぶ危険を回避できることになります。
今は必要性を感じていなくても「備えあれば憂いなし」です。住み慣れた住まいを快適にして、元気に長生きを目指しましょう。
執筆者情報
片岡 直子さん/一級建築士(住まいのナビゲーター)
リフォーム会社、設計事務所で戸建て住宅や併用住宅の設計および監理に長年携わる。2013年より一般財団法人住まいづくりナビセンターの住まいのナビゲーターとして、住宅相談とセミナー講師を担当。
*全国の登録事業者が表示されますので、お住まいのエリアに絞って検索ください。
よかったらシェアしてね